センセー、今日は相談したいことがあるんですけど、ちょっと酷いんです。聞いてくれますか?
酷いって、今回は何の相談でしょう?
彼氏にお金を貸したら、「近いうちに返す」と言いながら、全然、返してくれないんです。催促はしているけど、貢いでもらったとでも思っているのかしら。約束を守らないし、お金のことにルーズなのは最悪だから、もう別れたいと思って・・。その前に何とか取り返したいんです。
それは、ずいぶんな彼氏だね。口では返すと言いながら、心の中ではどう思っているかわからないし。もしかしたら、結婚を考えていて「一緒になればうやむやに」と考えているかそしれないけど、別れるつもりなら、それは早く取り返さないとね。ところで、いくら貸したのかな
最初は2年前に10万円、それから「まあ、いつか返してくれるだろうと」思って放っておいたら、半年前に「もう20万円貸して欲しい」と言われるままに貸してしまい、合計で30万円に・・。それからは、ことあるごとに催促しています。そう言えば、借金って時効があるんですよね。2年前に貸した10万円は大丈夫かしら?
個人どうしの借金に時効は10年だから大丈夫。ただ、催促しないでいると、時効が進むので気を付けてね。返して貰う前に別れてしまった場合、どうしても心配なら、催促の手紙を内容証明で送って、相手に縛りをかける方法もあるよ。内容証明は出すのは難しくないし、受け取った方はたいていの場合、「何が起きたんだ」とばかりにビックリするから、返済して欲しいという本気度が伝わると思う。絶対に甘い顔をしたままだとダメ。ちゃんと催促しないと。
あと、もう1つ心配なのは、借用書がないことなんです。半年前に貸した20万円については、前にも貸した10万円のこともあって、ちょっと心配になり、借用書を彼に書いて貰いました。30万円になると、さすがに大きいから。でも、最初に貸した10万円については借用書がありません。これって諦めないとダメなの?(涙)
借金というのは、口約束だけでも大丈夫ですよ。借用書が無くて口約束でも、絶対に借りた人は返さないとダメ。ただ、貸した証拠は欲しいところ。たとえば、LINEなどのSNS、メールなどで「貸し借り」を示すようなやり取りを彼氏と普段していると思うけど、お金を貸した時の記録は残っているかな?『貸してくれてありがとう。必ず返すよ』という程度の書き込みでもいいんだ。あと、お金は手渡し、それとも銀行振り込み?
後で調べてみるけど、何か記録として残っているかなぁ。2年前のだからダメかもしれない。お金は2回とも銀行で振り込みました。
銀行振り込みなら、通帳に記載されているはず。彼氏名義の通帳に振り込んだのであれば、記録として残るので、それは立派な証拠になるよ。古い通帳を無くした場合でも、銀行に言えば、たいていは有料だけど、過去の出入金状況を証明書として取ることもできる。口約束の借金って諦めちゃう人がいるようだけど、SNSや振り込みの記録などは立派な証拠。とにかく、残っている証拠を大切に保存、保管することが重要かな。
証拠というと、センセーは裁判所に訴えることを勧めたいのかしら?でも、裁判ってお金がかかるでしょ?弁護士費用とかとても高いと聞くし・・。貸したのが何百万円って額だったら、とは考えるけど、30万円という金額で裁判となると、却って損することになるような気がする。
そう、フツーに裁判を行ったら、合理的とは言えないかもね。裁判所に支払う手数料は訴訟額が100万円までなら1万円で済むけど、それ以外に弁護士に頼むとその報酬だけでもバカにならない。それに民事裁判となると判決が出るまで時間がかかるし・・。世間ではよく「訴えてやる~!」と口にする人が多いけど、実際の裁判はお金と労力を使って大変。裁判所データブック2018によると、日本の民事訴訟でかかった平均の期間は8.7か月だそうだ。
でも、泣き寝入りだけはしたくない。もう別れるつもりだから、訴えてでも、どうしても取り戻したいの。センセー、どうすればいいですか??
諦めることはないよ。比較的少ないお金でも、訴えることができるように、少額訴訟という制度があるから。確か、貸したお金は合計で30万円だったよね。訴訟金額が60万円以下なら誰でも利用できる制度なので、今回のケースでは少額訴訟制度が十分に活用できる。詳しくは裁判所のホープページで確認して欲しいけど、手数料もとても安く済むし、自分でも簡単にできる。
ふ~ん、それは便利そうですね。でも、裁判だから時間がかかりそう。早く決着させたいです。
審理も原則として1日だから、長い時間がかからない。審理の時に、訴状に揃えた証拠を添えて提出する。訴状は裁判所のホームページから貸金請求というところをクリックしてダウンロード、それをプリントアウトして書き込めばOK。この少額訴訟が、お金をかけずに、取り戻す一番の方法になるかな。
30万円だから利用できる制度なんですね。
先も言ったけど、60万円以下なら少額訴訟を利用するのがいいかな。状況によっては、通常の裁判に移行するケースもあるようだけど、いったん判決が出れば、その効力は絶対的なんだ。手許にまとまったお金がなければ、分割払いという方法もあるし、たとえば、彼氏がクルマを持っているなら差し押さえもできるよ。
通常の裁判だと、どんな感じになるの?
民事裁判では原則的に原告と被告が裁判に出頭するというところ、弁護士に依頼することがほとんどかな。本人尋問の日だけは裁判所に行く必要がある。お互いが歩み寄って、和解で終わらせることも少なくない。判決が出て、その内容に不服があれば2週間以内に控訴もできる。
なるほど。今日はありがとうございました。