生きていく以上ストレスはつきものですが、ナイトワークはナイトワーカー特有のストレスが存在します。
生体リズムを無視した夜型生活、アルコールの摂取、接客時における数々の我慢、人間関係、売上やノルマのプレッシャー、勤務時間外の仕事量、社会的評価、収入や労働条件の非安定性など多岐に渡ります。
これが複雑に絡み合い、昼職とはまた違うストレスを生み出すのです。
ジェンダーレスなホストも人気となっていくなか、まだまだ「男として強く・かっこよくあるべし」という価値観が主流の男性社会のホストクラブ。
そういった雰囲気や期待が、ときに彼らを追い込みます。
今回は、ホストが抱えこむ、人には言いにくい悩みについておうかがいしました。
店内では堂々と楽しそうにしているホストたちも、じつは不安でいっぱい。
なにかと追い立てられる日々。忙しさに心のモヤはかき消されているかのように見えて、気づかぬうちに蓄積していたのです。
心理カウンセラーの筆者が、ホストの悩みを通して水商売のストレスとの付き合い方を探ります。
どうしても自分に自信が持てない
高価な服やセンスのいい服をまとい、プロのヘアメイクをほどこし、店内の照明の光を受けてきらめき立つナイトワーカーたち。
ホストもまた、お客様が高いお金を払うにふさわしい出で立ちで接客してくれます。堂々としたふるまいや余裕ある会話、男としての自信に満ちあふれて見えるでしょう。
しかし、意外や意外。内心ではなかなか自信が持てずに悩んでいたのです。
ホスト歴5年、現在残念ながらナンバーには入っていませんが、後輩の面倒見がよく、お店全体の流れを見ながら動いている印象のAさん。日々プレッシャーと戦いながら奮闘されているようですが。
売上のプレッシャーは常にあります。
僕らは常にお客様を見てお客様に集中していないといけないはずですが、いつのまにか見ているものが数字にすりかわる。
接客していても数字がちらついて「ここでシャンパンを入れてもらわないと」と思ってしまいます。
焦りもあるからお客様がなにか話していても、どのタイミングで言おう、どう言おうと考えて話を聞くのも上の空だったり。でも結局言えない。
上の人からはお姫に甘々だと言われるんですが、自分に自信が持てなくてお金を使ってくれるよう促せないんです。
こんな自分に高額を使わせてしまうのが申し訳ないと。
お金を使わせようとしない接客スタイルが、逆にお客様に受けているのでは?
そうかもしれません。僕のお客様は酒豪な方がいない。
僕自身が下戸なので飲みゲーもできないし、自然にそんなに飲まないお客様が集まります。
飲まないお客様たちだからボトルも勧めづらい。
僕自身無理をしてほしくないのもありますが、むしろ気を使ってくれるお客様に対して、いいよと遠慮してしまうこともあります。
本当はもっと自信をつけて、いつ使ってもらっても堂々としていられる自分作りをしていきたいです。
学生時代はクラスのリーダータイプだったとも見受けられるAさん。
むしろ自信家タイプだったのかなと思わせる雰囲気がありますが、自信がないとは意外です。
やはりホストの価値はどうしても出した結果と結びつきますから、結果が出せないことが余計に自信を持てない原因のひとつかもしれません。
周囲からのプレッシャーがある?
それとも人と比較してしまうとか、人の目が気になるとかで自分が勝手に思ってしまうのでしょうか?
まさに比較です。周りからなにか言われたり、圧をかけられたりすることはないのに、自分で勝手に思ってしまうだけなんです。
気にはしてないようにしてますが、売上、組数、色々な面で気になっているのかもしれません。
周りと比べてお店に貢献できていないと思うし、いつももっと頑張らないとと自分を奮い立たせています。
しかし、こうしたくすぶりの時期にちょうど一気にお客様が切れがちで、ますます自信をなくすんですね。
その反対に、周りはどんどん売上をあげていくからさらに焦るという悪循環。
心のうちをさらけ出せる人がいない
お店側からプレッシャーをかけられるわけではないのに、周りを気にして自分で勝手に焦ってしまうのですね。
そしてその焦りがお客様に伝わり、お客様が離れていきますます焦ると。
そうなんです。もういい年(26歳)して、こんなことで悩んでいるのが知られてちょっと恥ずかしいですね。
本来ならお店を引っ張っていく立場なのに。
年齢や立場上、なかなか仲間に相談することもできない?
はい。むしろ僕が後輩たちの相談にのらなければいけない立場です。
後輩たちの話を聞いたり、店に対してにいろんなアイデアをだしたりすることも多いのです。
なので、自分の悩みを打ち明ける機会はなかなかない。
もちろんお客様にも口が裂けても言えません。
お客様の前では、キラキラしたかっこいいホストで居続けないといけませんから。
売れないことがむしろ売りなホストさんもいますが、Aさんはそういうキャラではないですものね。頼りがいのある男らしいホストのイメージ。
お店での立場やホストイメージを守るため、悩みを打ち明ける場所がない、つまり弱さをさらけ出せる場所がないというのはストレスを溜め込む大きな要因になりますね。
ホストは営業時間のみならず、プライベートでも仕事に関係する時間を使います。
また、後輩と同室の寮生活のためお店でも寮生活でも、強くあるべしといった「求められるホスト像」を終始演じ続けているのかもしれません。
こうした場合
・包み隠さず胸のうちをさらけ出せる人がいること
・仕事と全く関わりがない場所や時間を持つこと
が重要です。
人と比較して自己卑下してしまう傾向もあるようですが、これは強い責任感や真面目さの長所からくるものです。
考え方のくせはなかなかすぐにはなおせませんが、まずは体の緊張をやわらげることを意識するとストレスの改善につながります。
夜型生活のため睡眠の質が悪い可能性があるので、普段から遮光カーテンを使用して8時間は寝ましょう。睡眠の質が向上します。
日中はリラックスを心がけて、趣味やサウナなどの自分がホッとしたりボーッとできたりする時間を必ず確保してくださいね。
また、視点がほかの従業員などの周りの人に当たっているため、どうしても周りと比較してしまうことになります。
そのため、お客様に対してのフォーカスがぼやけている印象です。
周りの目など気にならなくなるくらい、お客様に振り切るのも手かもしれませんね。
売れない後輩に先輩ホストからのアドバイス
売れないことで自信をなくしているAさん。自信がないためにお客様にボトルのお願いができないようです。
こうした後輩になにかアドバイスはありますか?
自信がなく、お客様にお願いができないホストは一定数います。
その場合はヘルプが変わりにお願いします。
担当が席をはずすタイミングで、ヘルプがお客様にお願いする光景はよく見られるのではないでしょうか?
どこのお店でもそうですよね。
私のときは、直接担当がお願いしてくるほうが少ないかもしれません。
しかし、ヘルプに頼っていては自信がないという問題は変わらないのではないでしょうか?
むしろヘルプが頼んでくれたから降りたボトルでは、自分の価値の成果ではないと思いませんかね?
それでも売れっ子になったら自分は凄いって調子に乗るんで、勝手に自信は付きますよ。
天狗になりすぎたらそれはそれで問題ですけど(笑)
売れないことで日々悩みを抱えていたなら、よいパフォーマンスができないと思いますが、先輩方はどういった工夫をされてきたのでしょうか?
普段から楽しくするのが一番だと思います。
毎日出勤するのが楽しいと思えるには、どうすればいいのかを考えるのが早いですかね。
たとえば、仲良いお客様や従業員を作ると、今日も出勤して会いたい、楽しく飲みたいと思えるようになるはずです。
ほかには、誰かと「今月、勝負しよう」ともちかけお互い競い合う。店全体での競争より、2人での約束のほうが新鮮でかえって面白く感じるものです。
楽しく働ける環境作りですね。
たしかに緊張を生む環境では創造性も発揮できません。
アイデアは緊張ではなくリラックスから生み出されるものですよね。
また、楽しい雰囲気はお客様にも伝わりますね。
まとめ
ナイトワーカーの大きな悩みのひとつ、売れないことによるストレス。
どうしたら売上があがるのかばかりに注目していると、大切なお客様の理解を忘れてしまうことになりかねません。
ほかのキャストが気になりすぎ、嫉妬や嫌悪感に変わることも。
そういった場合、ほかのキャストが一切気にならなくなるくらい、お客様に振り切ってしまうのも手です。
お店で置かれた立場によっては、なかなか人に深い悩みを打ち明けることができないことが多いもの。また、打ち明けたところで話しが漏れてしまう可能性もあります。
その場合、カウンセラーなどの専門家や相談機関への利用も視野にいれるのがおすすめです。
アルコールの作用は精神にも及ぼすため、うつ症状やうつ病のリスクが高くなります。
キャバ嬢の皆様においては、メンタルケアには人一倍気を使って、自分の心と体を一番大切にしてあげてくださいね。