最近ホスト業界は何かと荒れがちだ。
しかしその中でも異彩の落ち着き方を放ち、何なら女性陣からキャーキャーという黄色い声が上がっている界隈がある。
それが「男装ホスト(ジェンダーレスホスト)」。
天使ニア氏や東雲ルキナ氏をはじめとして、TikTokから人気に火がついた。特に天使ニア氏は、在籍する冬月グループの中でも高いナンバーを保持し続けている。
そこでこの記事では男装ホストはなぜ人気なのか、また有名人の特徴から見えてくる人気になるポイントなどを徹底的に深掘りしていく。
男装ホストはいつから誕生した?
最初に、男装ホストというものはいつから誕生したのかについて迫っていこう。歌舞伎町に来て4年が経つ筆者の独自調査によれば、4年前まではおそらく「男装ホスト」「女ホスト」というものは”目立っていなかった”。目立っていなかったというのは「恐らくいただろう」というのが分かるからだ。
メゾンドボーテのインタビューで天使ニア氏はこう語っている。
今は全然いると思いますよ。うちの店にも1人いますし。これまでもいたっちゃいたとは思います。性自認が男性で女性が好きっていうFTM(女性の体で生まれたものの、男性として生きることを望む人)の方も全然いたと思うし。ただ、「女です」って言いながらホスト業界に入ってきた人はそんないないのかな?
https://beauty.beaute.tokyo.jp/column/11434
彼によれば、女性であることを公言して入ってきたキャストはなかなか居なかったのではないかという。
連続ドラマ「ホスト相続しちゃいました」でも、女性ホストが出てくる。下記画像の右上のキャストが女性ホストだが、まさに天使ニア氏がモデルになっているらしい。
「ホスト相続しちゃいました」が放送され始めたのが2023年4月18日。さらに天使ニア氏が入店したのが2021年8月26日。2年という期間でここまでブレイクしたとなると、この2年でジェンダー観や多様性が柔軟に変化し始めていることがうかがえる。
ぐーっと歴史を遡るのならば、異性の格好をして戯れるというのは出雲阿国時代にもあった。出雲阿国といえば安土桃山時代、江戸時代初期の役者だ。阿国の夫とされる三十郎が女装し、男装の阿国と戯れる「茶屋遊び」という演目で人気を博すということもあった。
歌舞伎町という名前の由来も、もともとはこの街を娯楽街として歌舞伎を行う予定だったためにつけられた名前だ。そう考えると、男装ホストというのはもはや江戸時代から存在していたのかもしれない。
男装ホストはなぜ人気なの?
それでは、なぜ男装ホストがこれほどまでに根強い人気を集めていくのかを考察していこう。
大きく理由は3つあると考えられる。
1.女心が分かるから
ジェンダーレスホストが人気になる最も大きな理由は「女心が分かるから」に他ならない。男と女という性別の壁はどうしても超えられないところがある。しかし、生物学的な性別が女性である男装ホストはいとも簡単にその壁を乗り越えてしまうのだ。
例えば仙台の女ホスト・東雲ルキナ氏のTikTokには「病んでいる姫との電話」「という動画がある。
これはもう、女から見たら沼でしかない。男性を見下しているわけではないことを念頭にこの先は読んでほしいが、おおよそ男性であれば「死にたいならじゃあ一緒に海に行く?」のような言葉は出てこない。「病んで電話してくるの可愛い」とも言わない。少なくとも筆者の(短い)ホス狂い歴で「病み=可愛い」と認識している男性ホストはまずいなかった。
それどころか自分のことを考えて落ち込んでしまっているのに、「病んでくるのウゼ~笑」と内心では考えていることがスケスケなのである。いくら「そっかぁ」と寄り添うような形を見せていても、「女の子はこう言ってほしいんだろうな」という予想が男性ホストはどうしてもつきにくい。
2.怖くないから
2つ目の理由として、シンプルに女性だから「怖くない」が挙げられる。東雲ルキナ氏のこちらの動画でもあったネタだが、何かと威圧的な印象を与えてしまうこともある男性と違って女性であれば怯える必要はない。
女性であれば、という言い方は若干横暴かもしれないが、やはり同性であるという安心感はとても強いのである。中には男性恐怖症の姫が「同性であれば怖くない」という理由で女ホストを指名するという事例もあるようだ。
また、女性のホストはTikTokを見ていると総じて「王子様感」が強い。
ガラスの靴を持ってきたイケメンな王子様にいつか愛されてみたい……という夢が多くの大人女性にはあったことを、男装ホストであれば分かってくれる。男性アイドルに女性たちが熱狂するように、男装ホストであれば女の子が思わずうなってしまうセリフも分かる。
3.自信や夢を与えてくれるから
最後の理由として、「男性社会の中でもここまで活躍できるんだ」という自信と夢を女性たちに与えてくれるというものが挙げられる。
ホストの世界は言わずもがな縦割りの男社会で競争も激しい。しかし、性別がたとえ女性であっても、男装ホストたちはその荒波に負けることなく活躍する姿を見せてくれる。
男装ホストの中で最も勢いがあるのは先にも述べたように天使ニア氏だろう。彼女(彼)は冬月グループという歌舞伎町のトップグループでナンバー入りを果たすほどに人気だ。
月間1,000万はもちろんのこと、年間で1億を超える売上をたたき出している。上記の動画からもうかがえるように、支配人昇格祭では見事なまでのシャンパンタワーで祝われるなど、男性社会のなかでも輝けることを身をもって証明している。
まだまだ男尊女卑の価値観が根強い日本。また、女性が輝ける社会づくりを、と豪語されていてもなかなかそれが進まない現在となっては、男装ホストはまさに女性たちの光でもあるのだ。
男装ホストは夢と努力の世界
女心が分かるから、女性たちに夢と希望を与えられるから、という人気の理由を解説してきたが、結局のところ人気を左右しているのは彼らの自分の魅せ方だ。
男装ホストであるというのはもちろん大きな差別化ポイントだが、それだけでは人気にはなれない。SNSを駆使したアピールや集客、ビジュアル、接客力など、多くの要素が絡み合って人気が成り立っている(筆者の担当にも見習ってほしいところである)。
彼女たちがこれからどう活躍していくのか、またホスト業界はどのように変わっていくのが、目が離せないところである。