寂しさの思想犯たちが食べるダウナーフード

夜明けの絶望が辺りを覆いつくすころ、歌舞伎町はカオスな微熱に包まれていた。1日が変わってまた1日が始まる世界の正しさとは裏腹に、朝の繁華街は歪みに満ちあふれている。

そんな中で、仕事を終えた夜の民が向かう先は24時間営業の安い居酒屋だったり、バーだったり、松屋だったり、ラーメン屋だったり、はたまたモーニングだったりさまざまだ。

しかしアルコールが息絶えた早朝で夜の民がどんな食事を摂るのか興味がある

歌舞伎町に来て4年、未だかつて食事にあまり目を向けたことがない筆者は、独自のヒアリングのもとオール後に朝食会場へと足を運んだ。

歌舞伎町、もとい寂しさの溢れる街のダウナーフード(?)を紹介していこう。

ホストの出汁を煮込んでいると言われる「ラーメン」

最初に紹介するのは言わずもがなラーメンだ。1年ぐらいの付き合いになる私の担当2人は、人生で欠かせないもののトップ3に入っていると豪語するほどラーメンオタクである。

仕事を終えた後に啜るラーメンのどこが良いのだろうか。種類にもよるが、実際に家系ラーメンを食べてみると、アルコールを摂取しつくした後によく沁みる背徳感に浸ることができる。人間というのは罪な生き物なので、夜中のラーメンやパスタやケーキに幸福を感じる。

私も隣に座っていた夜職女子もホストも、みんな必死に器に顔を伏せている様子を見ていると、このために生きてきたとでも言わざるを得ないような表情ではないか。

豚骨醤油ベースのこってりとしたスープ、ホストと姫の関係のような絶妙な太さの麺、こってり感の間に収めると舌触りの良さに病みつきになるチャーシュー。どんどん食べ進め、もう無くなってしまうのか……とがっかりしてしまう。がっつり系のものは早朝に食べるのは褒められたものではないが、たった1000円程度でこの幸福感が得られるのならばコスパが良い。

ところでホストとラーメンについては幣編集部でもコラムを書いているので、ぜひ一読してみてほしい。この章の見出しにある「ホストの出汁を煮込んでいる」にあるアンサーが分かる。

酔い潰れ太郎が集まる「松屋」フード

うわ、いるよいるよ定食を前に突っ伏してる大学生と売れてなさそうなホスト。

新宿靖国通りに面した店舗によく早朝に行くのだが、そこでは歌舞伎町ならではの風景が見られる。夜勤帰りらしきおじさま達も多いが、目立つのはオール明けのアジア系外国人や大学生、バーテン、トー横っぽい格好をしたホストたちの姿

バックグラウンドも何もかも違う彼らが一斉に席について牛めしをかき込むのである。私が頼むのはチーズ牛丼だが、やはり周囲を見ているとスタンダードな牛めしか、あるいはせめてもの健康志向としておろしポン酢を選んでいる人も多い。

出来立てほやほやの柔らかな牛肉を口に運び、そのあとに日本人のアイデンティティである白米を咀嚼する……。じゅわっとした風味が口の中に広がった瞬間に熱い味噌汁を口に含むと、なんとも言えない多好感に包まれていく。

私はオールで原稿を書き上げた後に松屋をかき込んで帰宅するのが趣味なので、松屋フーズの皆様には頭が上がらないほどだ。

というか、定食を注文して寝ている人が絶対に1人はいる。これ何とかならないんだろうか。それを外国人店員が無視しているのも何とも歌舞伎町っぽいが、料理を粗末にしちゃダメだよ、ぜったい。食ってから帰れよ!

花道通りの地下にある「つるとんたん」は夜職御用達

困ったらつるとんたん。

これがホス狂いの合言葉である。嘘である。そんなの聞いたことがない。

しかし私はつるとんたんをこよなく愛するつるとんたんユーザーの1人だ。(写真とは違うが)私が頼むのは「山かけうどん」。アルデンテのきいた太めの麺を咀嚼していると腹も心も満たされていき、こんなデッケェ器にこれだけしか入ってないのかよと言いたくなるがそれを後悔するほどの隠れたボリューミーさ。山芋のヘルシーさも程よく、秘伝の味がきいているのかツユの味もしょっぱさと甘さが同居していて美味だ。

辺りを見渡してみると、なんと多いことアフター帰り。おそらく夜通しバーで飲んだかホテルでしっぽりしたかのホストと姫の組み合わせやキャバクラ帰りらしき集団、はたまたホストの集団などが見られる。

ラーメンや牛丼などのジャンクフードを食べている様子を見ていても思ったが、夜職の人々は生き急いでいるように見える。なぜならめちゃくちゃかき込むから。

夜職フードを食べてあなたも歌舞伎町デビュー

夜職と縁遠い世界にいる人にとっては早朝にジャンクフードを食べるなんて……と思うかもしれないが、実際経験のある方も多いのではないだろうか。

早朝に食べるラーメン、松屋、つるとんたんは格別である。ぜひとも一度歌舞伎町に訪れて食べてみてほしい。

ABOUT US
カガリ ユウ
恋愛感情も性的欲求もない珍種のマイノリティホス狂い躁鬱ライター。夜職はガールズバー・いちゃキャバ・セクキャバを経験しそれなりに稼ぐものの、なぜか現在は昼職でデジタルマーケティング企業会社員をしている。本物は派手髪地雷女でSEOオタク。歌舞伎町4年生。